まつり

松原八幡神社秋季例大祭の歴史

ー旧松原村を中心にした「灘のけんか祭り」のあゆみー


近世後期の例大祭を描いた「奉納絵馬」


平成六年二月十一日、松原八幡宮境内の旧絵馬堂跡地に装いを新たに

した絵馬殿が完成し、殿内の壁面に氏子地域の全景を背景にして

例大祭の神幸渡御の行列が進む風景を描いた大きな絵馬が掲載されま

した。


絵馬は二つの大きな額縁に納められていますが、画面は一体のもので

すので、描かれた当初の画面は一枚でした。

額縁の材質は欅で、その大きさは東部を描いたものが縦145.5糎

(センチメートル)、横297.5糎、西部を描いたものが

縦145.5糎、横304糎です。また、画面の材質は松板で

その大きさは一枚の絵として見ますと、縦124.5糎、横591.5

糎の大きなものです。


肝心の絵の方は色絵具を使った鳥瞰(ちょうかん)図風にていねいに

描写していて、描かれた当初は美しく、かつ一般人が見ても祭礼見物

のよい資料になったと思われるのですが、永い年月にわたって風の吹

き抜ける絵馬堂に掲げられたためか、絵具が剥げ落ちてしまった部分

が多く、細部の検証が困難で、歴史史料として活用するには、現状で

はいささか難があるように思われます。


ただし、赤外線照射などで復元するという方法もありますので、今後

大切に保存して行く必要があるものと思われます。


額縁の裏面の桟に「寛永四歳亥六月中旬 御宮大工棟梁 松原村住

岡本勘左衛門重近 忰勘治良」と墨書されていて、

寛永四年(1851)にこの父子が額縁を奉納したことははっきり

しているのですが、それ以外の、この絵馬がいつ、誰によって描か

れたかといったことは、絵馬自体に画家の雅号や落款、そして制作

年代等の記入が全く見当たらないため、はっきりしたことはわかり

ません。


推定ですが、木場村の神沢仙蔵が文政十一年(1828)に例大祭

の様子を描いた大絵馬を奉納したと伝えられているのですが、その

大絵馬の所在がはっきりしていないため、あるいは、この大絵馬が

現在掲げられている「奉納絵馬」ではないかと推定できるからです。


つまり、松原八幡宮の「奉納絵馬」は、神沢仙蔵が奉納した大絵馬

を飾るために、それにふさわしい立派な額縁を宮大工棟梁の岡本父子

が寄進し、その額縁に既納の大絵馬をはめこんだものという解釈です

が、この観点から眺めてみますと、本職の絵師とまでは行かないまで

も絵筆に親しんだ人の作と思われる点、氏子地域、とくに海岸寄りの

地理が正確に描かれている点、神幸渡御の祭礼行列の描き方に、

「祭礼絵巻」と通じるものがある点などから、神沢仙蔵作を示唆する

ものがあるように思われます。


なお、ここで氏子地域の近世後期の文芸活動についてふれておきます

と、製塩業者や海運業者を主にした上級階級には本格的に詩歌や絵画

に親しんだ者が多く、とくに木場村では、日本絵画史上でも署名な

長澤蘆雪の子と孫にあたる長澤蘆州・蘆鳳父子がしばしば訪れて絵画

を指導したため、絵画をよくした人が多く、茂松園玉朗・神沢仙蔵と

もにこの時代の人です。


以上のように、寺脇弘光(郷土史家)先生はこの本を執筆されています。

子供の頃、小学校からの帰りに旧絵馬堂で遊んだ記憶がありましてこの

絵馬などのことも大人の人によくお話を聞いた記憶がありますが、

これほどの宝物だったとは思っていませんでしたこの本をこうして読み

返し知った事がたくさんあります。


そして、この祭りが長い世代にわたり歴史の重みに耐え、それをはね

かえして祭礼行事をついに自分たちのものにしてしまった氏子たちの

意地に弊(つか)れた人たちの執念が込められているのが(例大祭)


「灘まつり・別称 灘のけんか祭り」で先祖の人たちのさまざまな苦労

を知って次の世代に将来を託すことも現在に生きる我々のつとめでは

ないかと思い綴ったのが今回のブログです。 つづきはいずれか!

                          (敬称略)

参考文献

松原八幡神社秋季例大祭の歴史

ー旧松原村を中心にした「灘のけんか祭り」のあゆみー

発行日 平成七年十一月十五日

執 筆 寺 脇 弘 光(郷土史家)先 生

発   行 灘の松原自治会

    会 長 田 中 康 夫

編集委員会 北 村 泰 生(委員長)  継 谷 芳 久(副) 大 和 亀 一

(故人となられた方々のご冥福をお祈り申し上げます)


掲載写真は平成二十八年に撮影したもので、奉納絵馬は

ガラスケースで保護された状態です。


次回からは今のお祭り ブログ





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