松原八幡宮秋季例大祭の歴史
ー旧松原村を中心にした「灘のけんか祭り」のあゆみー
近世後期の「松原八幡宮祭礼絵巻」と「奉納絵馬」
巻軸の外装に「松原八幡宮絵巻ー 一」とあり、
二軸以上ある中の最初の軸であることを示しています。
「祭礼絵巻」に見る神幸渡御の順序
巻頭に瓢堂長種という人物の詞書(ことばがき)と・・・中略
「茂松園の主人である玉朗さんは、前々から万事ていねいに
心くばりをする人であるが、(このたび)目の前で展開する
(大祭礼の)実景をこのような図絵にして表現されたので、
誰でも初めて神幸渡御の次第を詳しく見ることができるようになった」
ちなみに、茂松園のあるじ玉朗とは、木場村の旧家三木家の主人で、
自宅の離れに庭園を築いて茂松園と称し、家業(製塩業)のかたわら
画像にも精通して玉朗と号した当地域の代表的文化人でした。
また、瓢堂長種は、幕末期に書かれた
「播磨奇人伝」(宇都宮大潔著、未出版)という古書によりますと
宇佐崎村の製塩業で冷泉(れいぜん)家の和歌に親しんだ
歌人石田長衛門の孫にあたる人で瓢 (ひさご)瓢箪で作った道具類を
愛用した風流人でした。「祭礼絵巻」には、詞書を含め年号がまったく
記入されておらず、いつの時点で描かれたのかは不明ですが、
瓢堂長種の兄の石田五芳が継村の大年山の麓に笠舎(かさやどり)と
称する庵を構え、庭前に俳聖松尾芭蕉の遺品として大切にしていた
菅蓑(すげみの)の幾筋かを埋めた塚を築いて、小蓑塚と名付け、
その上に芭蕉の
「初しぐれ猿も小蓑を欲しげなり」の句碑を建てたのが
天保六年(1835)であるところから察して、おそらくそれより
少し後の天保年間後半から弘化年間にかけての頃に描かれたものと
思われます。
末尾に平安仁清筆という落款があり、京都の仁清という絵師が絵筆を
とったことがはっきりしています。
御旅八幡神社(御宿殿)
←流鏑馬
←松原村傘鉾(幟、かさぼこ)
←松原村獅子屋台(幟、獅子、檀尻)
←神社祭礼旗(神社御紋入り幟)
←社宝・武具・飾物(槍、長刀、的、大鳥毛、鎧櫃、大鳥毛、冑櫃、
御先太鼓、金幣、四神旗等)
←承仕(三人)
←雅楽(神楽太鼓、鉦鼓、ひちりき、笙、横笛等)
←掩蓋 えんがい 高僧(六人ー八正寺社僧)
←領主駕籠(姫路藩主あるいは代理の姫路藩宗門奉行用)
←神役人(五人)
←一ツ物(一人)
←天童(三人)
←一の丸神輿(幟、神輿)
←二の丸神輿(幟、神輿)
←三の丸(幟、神輿)
←神役人(一人)
←木場村獅子檀尻(幟、お迎え提灯、獅子、檀尻)
←妻鹿村獅子檀尻(幟、獅子、檀尻)
←宇佐崎村獅子檀尻(幟、獅子、檀尻)
←八幡宮八家邑獅子檀尻(幟、獅子、檀尻)
←八家村獅子檀尻(幟、獅子、檀尻)
←寺領獅子檀尻(幟、獅子、檀尻)
←木場村神輿太鼓(幟、屋台)
←松原村西神輿太鼓(幟、屋台)
←(中村)神輿太鼓(幟、屋台)
←※妻鹿村(西)神輿太鼓(幟、屋台)
←※(宇佐崎村西)神輿太鼓(幟、屋台)
←※(宇佐崎村中)神輿太鼓(幟、屋台)
←※松原邨中神輿太鼓(幟、屋台)
←(宇佐崎村東)神輿太鼓(幟、屋台)
←東山村神輿太鼓(幟、屋台)
←※八家村(南)神輿太鼓(幟、屋台)
←※妻鹿村(東)神輿太鼓(幟、屋台)
←※八家村(北)神輿太鼓(幟、屋台)
←放生川
←木場邑西丹鶴(幟、囃子、御坊乘檀尻)
←宇佐崎邑丹鶴(幟、囃子、御坊乘檀尻)
←木場邑東丹鶴(幟、囃子、御坊乘檀尻)
←妻鹿邑丹鶴(幟、囃子、御坊乘檀尻)
←八家邑丹鶴(幟、囃子、御坊乘檀尻)
「祭礼絵巻」は松原八幡宮例大祭の神幸渡御の行列の一部始終を
余すところなく描いていますが、絵巻では行列の後方から前方へ
と描かれていて、出発順とは逆になっています。
しかし、文章では行列順を紹介するには、逆順ではわかりにくい
ので、以下、行列の出発順に巻末の方から神幸渡御の次第(順序)
を列記し、文献史料とちがって、すべての出し物を正確に表記する
ことは困難ですので、主要な出し物に限定したり、推定によって
表記した部分もありますので、この点、ご了解ねがいます。
また、宝暦八年(1758)の「八幡宮御神事御規式定」以後に
氏子村から新しく差し出されるようになった出し物には※印を
付し、個々の出し物のうち幟に記された村名がはっきりしないも
のについては、推定村名・地区名を〔 〕に入れて記入しました。
なお、松原邨、八家邑など村の字の代りに別の漢字邨や邑を
あてているものがありますが、幟に書かれている字をそのまま
表現したまでのことで、特別の意味はありません。
と寺脇先生は記述されています。
次は 「奉納絵馬」
参考文献
松原八幡神社秋季例大祭の歴史
ー旧松原村を中心にした「灘のけんか祭り」のあゆみ
執筆 寺 脇 弘光(郷土史家)先生
発行 灘の松原自治会
平成の 灘まつり
編 者 北 村 泰 生(写真家)
発行者 木 村 勝
発行所 神戸新聞総合出版センター
(敬称略)
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